カテゴリー: OHトレーナー
ご飯の糖質は脳にも健康にも重要なエネルギー源
コヒーレンスでポジティブな波を広げる
「元気をもらう」の正体は心臓から出る電磁場
TransTechカンファレンスから
コラム2018.11.29
「前向きな人に会って元気をもらった」。そんな表現を耳にすることがある。しかし実際に「元気をもらう」などということが、果たして可能なのだろうか。シリコンバレーで開催されたTransTechカンファレンスでは、「元気をもらう」というメカニズムを科学的に解明している研究者が登壇していた。Deborah Rozman博士で、同博士が所属するHeartMath Instituteのサイトに、関連する論文「The Energetic Heart」があったので読んでみた。それによると、心臓は電磁波を出していて、周りの人にいい影響を与えることが可能なのだという。
論文によると、心臓は体の中で最も大きな電磁場を形成しており、心電図で測ることのできる電磁波の振り幅では、脳波計で計測できる脳波の振り幅の60倍にもなるという。また心臓の発する磁場成分の強さは脳が発する磁場成分の5000倍もあり、細胞組織に邪魔されることなく、1~2m離れた場所でも計測が可能だという。
科学的な論文なので「これが元気をもらうメカニズムだ」とは断言していないが、規則正しい心臓の電磁波のリズムが周辺の人の体にも影響を与えると結論づけている。
▲脳が必ずしも感情を司っているわけではなかった
この論文でおもしろいと思ったことの一つは、脳が必ずしも感情をつかさどっているわけではないということだ。
1990年代までは、脳だけが感情を生成していると考えられていたが、最近は脳と身体の共同作業を通じて、認識や思考、感情といったものを生成しているという考え方が主流になりつつあるという。特に心臓が、感情の生成において重要な役割を果たしていることを示す実験結果が幾つか登場しているようだ。最近の神経心臓学では、「心臓は感覚器官であり、大脳皮質が関与しない学習や記憶、決定を可能にする、高度な情報のエンコーダーとプロセッサーの中心的な役割を担っている」と結論づけているという。
大脳皮質は、知覚、随意運動、思考、推理、記憶などの高次機能を司っているが、大脳皮質が関与しない脳の活動に関しては、心臓が中心的な役割を果たしているということだ。
心臓が出す電磁波、音圧、血圧のリズムは、身体中の全ての細胞によって感知される。つまり心臓が体の細胞、臓器の同調シグナル発信機の役割を果たしているという。ちょうどオーケストラにおける指揮者の役割を、心臓が担っているようなものかもしれない。
最近の研究では、心臓が発信するリズムの中に情報が込められており、特に神経やホルモン、電気などの低周波の振動の中に、感情に関する情報が込められている可能性があると指摘されているという。
心臓が発信する信号で最初に脳に到達するのは電磁波で、次に神経系の信号が8ミリ秒後に到達。血圧の信号は240ミリ後に脳に到達するのだという。また心電図の波の形を継続的に観察すると、微かながら複雑に変化していることが見て取れる。なので心電図の波の形の中にも情報がエンコードされている可能性があるという。
AIが感情を持つことが可能かどうか。よく議論になるテーマだ。この論文を読む限り、人間の感情には脳以外の身体も大きく関わっており、脳のメカニズムだけを電子回路で真似しただけでは人間の感情のようなものは再現できない、ということが分かる。
▲ポジティブな感情が心臓と脳をシンクロさせる
心臓のリズムと脳のα波は自然とシンクロすることが分かっているが、特に心にポジティブな感情を思い浮かべているときは、心拍のリズムが非常に規則正しくなり、その結果、α波のリズムも心臓にシンクロし、規則正しいものになるという。
そして心臓と脳波が規則正しくシンクロし始めると、呼吸のリズム、血圧、皮膚の電気信号のリズムなどもシンクロし始める。こうした状態をこの論文の著者は「身体的一貫性」と呼び、身体的一貫性が達成されれば、身体が最も効率よく働き始め、精神的、身体的な様々な恩恵を受けることになるとしている。例えば、毛細血管や細胞組織における液体交換、通過、吸収の効率が向上するほか、心臓血管系の循環ニーズに対する適応能力が向上するという。その結果、免疫力が向上することになる。また認識力が向上し、思考がクリアになり、感情が安定。その結果、幸福度が向上するとしている。
仏教や武道などで言われる「心身一如」には、この論文が言うところの「身体的一貫性」に通じるところがあるのかもしれない。
さて身体的一貫性は、睡眠中や深いリラクゼーションの中で達成されることが多く、通常の目が覚めた状態で身体的一貫性に達することはまれだという。
下のグラフは、フラストレーションを感じている人が、感謝の気持ちに転じたときに見られた心拍の波の変化だ。フラストレーションを感じているときは心臓のリズムが乱れているが、感謝の気持ちに転じた途端に、心臓が規則正しいリズムで動き出しているのが分かる。
下のグラフは心臓の電磁波の強さを計測したもので、感謝の気持ちのときには心電図の波の振れ幅が大きく、怒りの感情のときは振れ幅が小さいことが分かる。心臓が発信する電磁波の波形の中に、感情に関する情報が組み込まれているわけだ。
▲ポジティブな感情は他の人の身体にも影響を与える
さて、ここまでの話をいったんまとめよう。まず感情は脳だけで生成するものではなく、心臓と脳のチームワークで生成されるものだというポイントが一つ。2つ目のポイントは、特に心臓が発信するポジティブな感情の電磁波は、脳をシンクロさせ、身体の細胞すべてをシンクロさせる、ということ。3つ目は、電磁波は自分の身体だけではなく、近くにいる他人の身体にも到達する、ということ。
この3つのポイントを踏まえると、電磁波が自分の身体の隅々にまで影響を与えるのなら、近くにいる他人の身体にも影響を与えているのではないだろうか、という疑問が浮かび上がってくる。それがこの論文のテーマだ。
Figure 6の下のグラフは、被験者番号1番の人の心電図。論文によると、心臓の動きが安定していることが分かる波形だそうだ。上のグラフは、被験者番号1番の人の心電図の波形と、近くにいる被験者番号2番の人の脳波の波形の比較。論文によると、1番の人の心臓の電磁波が、2番の人の脳波とシンクロしているのが分かるという。
Figure 8の下のグラフは、別の被験者の心電図。この波形から見て、この被験者の心拍は安定していないという。上のグラフはこの被験者の心電図の波形と、近くにいる別の被験者の脳波の波形の比較。まったくシンクロしていない。
つまり、心電図が安定している人の電磁波は、周辺の人の脳波を安定させる可能性がある、ということになる。
この論文では「多くの人はコミュニケーションが言語や表情、声のトーンなどのわかりやすい信号を通じて行われていると思いがちだ。しかし実際には潜在意識下で、かすかではあるものの、しっかりとした影響力のある電磁波やエネルギーコミュニケーションのシステムが作動している」と結論づけている。
「元気をもらう」「エネルギーをもらう」という表現は、感覚的で抽象的なものので、その人が何を意味しているのかは正確には分からない。しかし「元気をもらった」と表現する人の中には、他人の規則正しい電磁波の影響を受けて、自分の脳波が安定した波形になる状態のことを「元気をもらった」と表現しているケースがあるかもしれない。
この領域はまだまだ分からないことだらけだが、少なくとも人間は電磁波などのエネルギー交換を通じてコミュニケーションしている、ということだけは事実。ポジティブな感情、ネガティブな感情以外のより複雑な情報も、人間は電磁波でやりとりしているのだろうか。今後の研究成果が楽しみだ。
▲そのほかの興味深い実験結果
この論文に記載されている、そのほかの興味深い実験結果についても触れておきたい。
下のグラフはある夫婦の寝ている間の心拍数の推移比較。心拍数の波形がシンクロしているのが分かる。
論文によると、寝ている間は身体的一貫性の状態になり、その結果、近くにいる人と心臓の動きがシンクロするようだ。
一方で、目が覚めているときに、二人の人間の心臓がシンクロするのは、非常にまれだとしている。
ただし下のグラフにあるように、ポジティブな感情を互いに持てば、心臓がシンクロするようだ。
シンクロするのは人間だけではない。ペットと飼い主の心臓のリズムもシンクロするという。下のグラフにあるように、同じ部屋にいるときに、心臓のリズムが見事にシンクロしている。
電磁波だけでも情報は伝達され他人とシンクロすることは可能だが、手を触れることでシンクロ度合いがよりはっきりしてくる。それを示したのが下のグラフだ。
左は手を繋いでいないときの被験者Bの心電図と被験者Aの脳波。右は手をつないだときの心電図と脳波。手をつなぐことで被験者Bの心電図と被験者Aの脳波の波形がよりはっきりとシンクロしているのが分かる。
手をつなぐとどのように情報が伝達するのだろうか。皮膚の電気信号だろうか。この分野も興味深い。
なかなか斬新な研究成果だけど、研究者の間ではどの程度、評価されているものなのだろうか。
AI新聞より
生理学的に見たチームワークの力:心拍変動と社会的連帯の関係
2018年12月16日 2019年1月5日
心拍変動(Heart Rate Variability/HRV)とはなにか?
心拍変動というのは、どうにも聞き慣れない言葉ですが、これは心拍数のリズムの変動を表す概念になります。
私達の心臓はドクンドクンと規則正しく動いているように見えますが、必ずしも定規で図ったように一定のリズムで動いているとは限りません。
ドックンドックンという鼓動と鼓動の間にはちょっと長めだったり、ちょっと短めだったり、それなりのリズムのゆらぎがあります。
心拍変動というのはこういった心拍のリズムのゆらぎを示したものですが、
一般に人の体は興奮して交感神経が優位になるとこのトクントクンと心拍数が早くなり、リズムも比較的一定になり、心拍変動が少なくなり、
またゆったりとして副交感神経が優位になるとこのトックントックンと心拍数が遅くなり、遅くなった分、リズムが比較的不揃いになり、心拍変動が多くなることが知られています。
近年は計測機器や計測技術の発達により簡便にこの心拍変動を捉えることができるようになってきていますが、この心拍変動というのは人と人との関係性にどのような影響を与えるものなのでしょうか。
心拍変動と社会性の関係
今日取り上げる論文は、この心拍変動と社会性の関係について調べた論文を取りまとめたレビュー論文になります。
社会性というと言葉が固いのですが、私達人間は基本的につるみ合って何かをする生き物です。
それは夫婦だったり、家族だったり、仲間だったり、チームだったりしますが、互いに気を使いながら協力し合うことでいろんなことを成し遂げていく生き物です。
よく「息が合う」といいいますが、この論文によると心拍変動が仲間内で同調しているほど、チームとしての能力が高いこと、
具体的には
- 親切な行動や協力行動が多い
- コミュニケーションが互いに取れている
- 社会的不和が少ない
- 敵対的な相互作用が少ない
といった特徴があること、
また心拍変動を互いに同調させる具体的な訓練方法があり、この訓練を行うことでチームパフォーマンスを上げられること、
さらに興味深いことには、この心拍変動というのは、私達が意識するしないにかかわらず、同じ部屋に置かれたメトロノームがいつのまにか互いにシンクロして揃ってしまうように、
私達の心臓も心臓の電気信号が発する強力な電磁場の作用により、近距離であれば心拍変動が同調してしまうことが述べられています。
イライラしている人の近くにいるとなんとなく落ち着かない気分になったり、あるいはゆったりとした人の近くにいるとこっちまでゆったりした気分になるのは電磁場を通じた心拍の同調作用があるためなのかなと思いました。
実証的な研究もいくつかあるようなので、今後また取り上げていきたいと思います。
wondering mindより
黄金の90分睡眠が大切
スタンフォード流”賢くなる睡眠”実践術超多忙な中での睡眠の「奥の手」
PRESIDENT 2018年9月17日号
十分な睡眠時間をとらないと、翌日の作業効率は落ちる。それが続けば仕事や勉強にも影響して“バカ”になってしまうだろう。それでは、賢くなるためにはどんな睡眠をとればいいのだろうか。
一流の人間が睡眠にこだわるその理由
夜、ベッドにもぐりこんだ瞬間に寝落ち、朝までぐっすり快眠。そんな「ドラえもん」ののび太君級の深い眠りを享受できているビジネスパーソンは、日本にどれだけいるだろう。実際は疲労困憊なのに寝付きが悪く、夜中に何度も目が覚め、朝が来ても体は泥のように疲れている、そんな日々を送る人は多いのではないだろうか。「24時間戦えますか?」そんなCMが流れたバブル期はいざ知らず、いまや適切な睡眠が勉学や仕事の効率を上げることは明らかになってきている。上質な睡眠こそが、仕事と人生の質を左右するといっても過言ではないのだ。
2017年、ベストセラーになった『スタンフォード式 最高の睡眠』(サンマーク出版)。睡眠生体リズムを研究する著者・西野精治氏は、同書で睡眠医学の総本山スタンフォード大学をはじめとする最新の睡眠研究の知見を紹介している。曰く、すでに一流のアスリートは睡眠の重要性を理解しベストパフォーマンスを出し、そのノウハウはビジネスにも応用できる。「睡眠時間を削ってでも仕事に邁進すること」が、いかに人体にも仕事の効率にも悪影響を及ぼすかを西野氏は論理的に説いている。
一方で、睡眠の重要性は理解できても、職場環境やシフトの組まれ方、繁忙期などで理想的な睡眠を実践できない状況下の人もいる。医師であり、同時にMBAを取得した医療機関再生コンサルタントの裵英洙氏は、自らも実践する超多忙な中での睡眠の「奥の手」を伝授する。一日のベストパフォーマンスは前日の眠りから始まっているのだ。
世界一「睡眠偏差値」が低い日本
ここに1つのデータがある。ミシガン大学が2016年に行った調査結果だ。これによると日本人の睡眠時間は100カ国中、なんと最下位。日本人の4割が6時間未満の睡眠時間で生活しているという。しかも問題は、日本人自らこの睡眠時間に不満を感じ、できるなら東京の人は7時間21分は眠りたいと考えていることだ。つまり日本人は毎日約1時間半近くも睡眠不足で、生活していることになる。
日本人の「睡眠偏差値」は低い。それだけ日本人が多忙な日々を送っているともいえるが、一方で睡眠に対してあまりに無頓着であることをも表している。
スタンフォードに隣接するのどかな米・パロアルト市に住む西野氏は、来日のたびに日本の都市の明るさに目がくらむという。
「24時間営業のコンビニや飲食店、街のネオンでまるで不夜城。『眠らない』街は、『眠れない』日本人を多く生み出しています」
自宅に戻っても日本人の目と脳は休まらない。深夜番組やネット配信動画、スマホやタブレットで夜中までブルーライトを浴びまくる。そんな状態で床に入っても、すぐに寝付けないのは当然だ。1960年代には6割の人が夜10時までに寝ていたが、00年ごろからは、その割合は2割台までに下がっているとのデータもあるという。
「大人の睡眠時間減少に引きずられ、子どもの睡眠時間も減っています。満員電車はイライラとキレる大人であふれ、学校では情緒不安定や居眠りし続ける子が増えている。うつ病や不登校などの問題も、睡眠と無関係ではありません」(西野氏)
「睡眠負債」が引き起こす「眠りの自己破産」
では具体的に、睡眠不足は何を引き起こすのか。短期的・長期的な影響を西野氏に聞いてみた。
「私たち睡眠研究者は、睡眠が足りていない状態を『睡眠負債』と表現しています。『不足』ならいつか取り戻せますが、『負債』となると簡単ではありません。借金同様、返済が滞れば『眠りの自己破産』だって引き起こしかねません」
アメリカの学会誌『Sleep』では夜勤明けの医師と、夜勤のない医師を対象に、日中の覚醒状況を比較する実験を行った。すると驚くべきことに夜勤明けの医師は、勤務中に1秒~10秒間、眠りに落ちる瞬間があった。本人も周囲も気づかないほどの居眠り。これを「マイクロスリープ(瞬間的居眠り)」と呼ぶ。
「勤務中の医師が寝るなんて」と驚かれるだろうか。しかし自らを振り返っていただきたい。退屈な会議中や、昼食後の静かなオフィスで、瞬間的に意識が飛んだ経験はないだろうか。「自分は十分寝ている」と思う人も、日中の集中力が続かない場合は「睡眠負債」に陥っている可能性がある。もし車の運転中や大事な商談中に、「マイクロスリープ」が起こったら……。大事な商機や生命そのものが奪われかねないのだ。
長期的な影響はどうだろう。ショウジョウバエの実験や、アメリカでの100万人を対象にした実験などで、短時間睡眠者は短命になりやすいという報告が上がっている。さらに肥満になりやすい、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、認知症への影響も無視できない。
睡眠時、私たちは約90分周期で「ノンレム睡眠(脳も体も眠っている)」と「レム睡眠(脳は起きて体が眠っている)」を繰り返している。最初に訪れる深い「ノンレム睡眠」では、グロースホルモン(成長ホルモン)が分泌され、細胞を増殖させ、代謝を促進している。特に日中、緊張感に包まれ働いているビジネスパーソンは交感神経優位の状態で過ごしているが、睡眠中に副交感神経が優位になることで、自律神経も整えられ、消化や排泄も促される。
記憶分野で果たす睡眠の役割も大きい。睡眠時に嫌な記憶は消去され、必要な情報や勉強した記憶などが定着するからだ。
つまり、上質な睡眠の結果、朝から活力にあふれ、明晰な思考力や判断力に優れ、情緒が安定した状態で働く力を得られているのだ。
入眠直後の「黄金の90分睡眠」この質を整える
では「最高の睡眠」とは、どのようにすれば実現できるのだろう。まずあなたの現在の睡眠が、どのレベルであるかチェックリストで確認してほしい。西野さん協力 1分でわかる! 睡眠チェックリスト
(1)朝、なんだかイライラする
(2)「あーよく寝た」と思うことが少ない
(3)起きたい時間より早く目が覚め、その後眠れない
(4)昼間、睡魔に襲われる
(5)週末は普段より1時間半~2時間半多く寝る
(6)寝付くのに30分以上はかかる
(7)寝る時間は決まっていない
(8)眠れるか不安になる
(9)夜間に何度も目が覚める
(10)小さな物音や光に反応してすぐ起きてしまう
0~2個
よく眠れています。このまま睡眠の質をキープしてください。
3~5個少し質が悪いようです。この記事を参考に少し工夫を。
6~8個
自分では眠れているつもりでも、実はあまり眠れていない?
9~10個
あまり眠れていないようです。自覚症状もあるのでは。
西野氏は、「睡眠の質は、眠り始めの90分で決まる」という。
「夜の10時から深夜2時までが睡眠のゴールデンタイムといわれますが、むしろ寝入りばなの90分、最初の『ノンレム睡眠』をどれだけしっかりとれるかで、睡眠全体の質が決まると考えてください」
そのためには睡眠環境を整えることも重要だ。
「睡眠は意外と繊細です。寝室の温度や湿度、枕の高さや布団の性質、ひとりで寝るのか家族と一緒かどうかでも眠りの深さは違ってきます。ノイズや照明などの外的要因に、身体疾患や心配事などの内的要因。疲れすぎて眠れないことや、ストレス性の過緊張や首肩の凝りで眠れないことだってあります」(西野氏)
眠っている間に呼吸が10秒以上停止する睡眠時無呼吸症候群も、もともと顎の小さい日本人はなりやすく、さらにそこにアルコールが入ると悪化するという。
「もし10秒以上の呼吸停止が1時間に15回以上続くようなら、病院に相談してみてください」(西野氏)
日常的に西野氏が勧めるのは、「入眠のルーティン」を確立することだ。人間は約14~16時間続けて起きていると、自然に「睡眠圧(眠りたくなる欲)」が高まってくる。これを阻害せず、心地よく眠りに誘う儀式を決めてしまう。
「決め手は体温の調整です。皮膚温度と、体の内部の深部体温の2つを調整するために、入眠の90分前までに40度ほどの湯に15分入浴することをお勧めします。夏はシャワーで済ませがちですが、むしろ冷房で体が冷えているからこそ、深部体温を温めるために入浴は欠かせません」
また、睡眠には「モノトナス(単調な状態)」が大切だという。いつもの時間にいつものパジャマで、いつもの照明と室温で眠りを誘う音楽をかけるなど。
反対にしてはならないことは、脳に刺激を与えることだ。面白い小説を読んだり、カフェインを摂取したり、ベッドに横たわってスマホのゲームをするなどもってのほかだ。
自分の「理想の睡眠」を知るために
一方で、「睡眠に正解はない」というのも、眠りの専門家である西野氏と裵氏の共通する認識だ。
「8時間睡眠がいい、90分の倍数寝るといい、さまざまな意見はありますが、それらはあくまで平均的な話。100人いれば100通りの基礎体力や生活環境があります。約90分周期といわれるレム睡眠とノンレム睡眠も、実際には120分まで個人差があり、マニュアル通りにはいきません。ナポレオンのように3~4時間睡眠のショートスリーパーもいれば、8時間睡眠が必要な人もいる。まずは自分の理想の睡眠時間を知ることです」(裵氏)
自分の睡眠時間が最適かどうか、「睡眠効率」の計算式でわかるという。
たとえばベッドで8時間横になっていたが、実際に眠れたのは6時間だった場合、「6時間」÷「8時間」×100=75となり、「睡眠効率」は75%となる。
大人の場合は100%を目指す必要はないという。横になってすぐに爆睡できるのは子どもくらいなものだからだ。大人の合格ラインは85%。横になり35分で入眠、目覚めて35分で起床できれば、まずまずという。
次に裵氏が勧めるのは、3日間~1週間の「睡眠ログ」を記録すること。「レコーディングダイエット」同様、自らの睡眠パターンを可視化し、「睡眠効率」を上げるのが目的だ。
手順は簡単。メモ用紙に「日付」と「入眠時間」「起床時間」を記し、「睡眠時間」と「睡眠効率」を割り出す。と同時に「覚醒時の爽快度」や、「日中のパフォーマンス」の状態も〇△×で記しておこう。
すると意外なことが見えてくる。自分はショートスリーパーだと思っていた人が、案外翌日あくびが多く、仕事のミスが多いこともある。反対に寝すぎて体調が悪い日もあるだろう。何時間寝れば、翌日の体調も良く、仕事のパフォーマンスも上々なのか理解しよう。
忙しすぎてどうしても寝られない人は……
ただ、どうしても繁忙期で帰宅が終電になったり、翌日の資料作成で徹夜になったりすることもある。遅番や夜勤など、睡眠を自らコントロールできない職種もあるだろう。そんな緊急時にも応用できるお勧めな方法があるという。
「私自身、普段から実践しているのが昼寝です(笑)。もともと午後2~4時はどうしても眠気が訪れる時間帯で、だからこそ国民的にシエスタ(昼寝)が習慣化している国もあるほど。日本ではいまだ『オフィスで昼寝なんて不謹慎』という考えが多いですが、疲れた体と眠たい頭でダラダラと仕事するよりずっと効率的です。どうしても周囲の目がはばかられる場合はトイレで20分間昼寝することもお勧めします」(裵氏)
ただ30分を過ぎると、脳は本格的な熟睡モードに切り替わるため注意が必要だ。そのほか、カフェインはその血中濃度が薄れるタイミングの午前9時、午前12時、午後3時あたりで摂取すること、夕食は寝る3時間前までに済ますこと、深夜残業時は分食で対応すること、飲み会では酒と同量のチェイサー(水)を飲むことなど、日頃の気配りが睡眠の質に大きく影響してくるという。
現在、アメリカでは数千もの睡眠クリニックが開業しており、社会的に睡眠への意識が高い。一方の日本では、いまだに長距離トラック運転手の過失事故や、過労死問題が頻繁にニュースを騒がせている。
「政府自ら地下鉄の24時間運転や、シャイニングマンデー(※)などを提唱する国ですからね。それによる経済効果より、睡眠負債が引き起こす健康被害や産業事故による損失のほうがはるかに大きいのに。アメリカではすでに40年ほど前から、時間生物学を考慮した働き方やシフトの組み方をNASAや産業界が実践しています。日本は数十年遅れというべきでしょうか」(西野氏)
製造業や介護現場など、どうしても深夜勤務が必要な職種もあるが、その場合もアメリカでは3カ月間深夜勤務のみというシフトを組む。日本式の昼夜2交代を繰り返すのは最悪のパターンで、「覚醒時のパフォーマンスも落ちるし、事故もうつ病も増える」(西野氏)という。
裵氏、西野氏ともに、日本人の睡眠負債は職場のマネジメント不足や社会的な認識不足も関係していると捉えている。日本の生産性向上や「働き方改革」の前に、「睡眠」の重要性も考慮に入れるべきだろう。
※シャイニングマンデー……月曜日の午前休。経済産業省が「プレミアムフライデー」に続くキャンペーンとして検討していると、テレビ朝日が報じた。
Q 大事なプレゼンの前日、緊張で眠れません。
A プレゼンの2日前の睡眠時間を減らし、「睡眠圧」を高めましょう。
睡眠は生活習慣の一部。明日は大事なプレゼンがあるから、いつもより早く布団に入ってぐっすり寝たいと思ってもできません。ちなみに普段の就寝時刻より2~3時間ほど早い時間帯は最も眠りにくい時間帯。そこで緊急措置として、その大切なプレゼンの2日前の睡眠時間を減らすことをお勧めします。すると、前日は睡眠圧(眠たい気持ち)が高まるので、ゆっくり寝られます。意識して長めの半身浴をしたり、大好きな焼き肉で気合を入れたりするのは、逆効果になるかも。
Q 夏の朝は起きても眠った気がしません。
A 暑くてもシャワーで済まさず、入浴してベッドに入りましょう。
夏はシャワーで済ませる人も多いでしょうが、夏こそ湯船に入るべき。眠気は体温の変化と密接に関わりがあり、体温が下がると自然な眠気が訪れます。湯船で温まって少し体温を上げると、そのあと体温が下がり、心地よい眠りが得られます。夏はエアコンの効きすぎや、冷たいものの食べすぎで、日中に体が冷えている傾向があります。また、エアコンのつけっぱなしは目覚めを悪くします。朝は体温が上がるので、合わせて部屋も温度調整しましょう。
Q 朝カツしたくても、起きられません。
A 頑張った自分へのご褒美を何か用意しておきましょう。
朝起きられない原因の大部分は、睡眠の質の悪さや睡眠不足ですが「楽しみがない」「目的が弱い」という「起きるモチベーション」の側面も無視できません。そこで、ほんの少し「自分だけのための邪魔されない時間」をつくるだけで、1日の充実度・満足度は上がります。甘いもの好きならケーキを前夜に用意しておくのもいいでしょう。私は起きがけのコーヒーが楽しみです。朝は、寝る前にタイマーセットしたコーヒーメーカーから漂う香りを嗅ぐのが毎朝楽しいです。
Q 悩み事が多く、布団に入っても眠れません。
A 15分たっても寝付けない場合は寝室から出てみましょう。
まずその悩みや不安は自分でコントロールできるものなのか、整理してみてください。「明日の株価が気になる」「上司と合わない」などの悩みは自分ではどうしようもない。自分で対処できることだけに絞り、あとは考えないと割り切るのも大切。また、就寝時刻前の1時間ほどは、好きなことをしてリラックスしましょう。15分たっても起きていたら、寝室を出て他の部屋で好きな音楽を聴いたり、読書をしたりしてみましょう。眠くなったらまた寝室に戻りましょう。
Q 海外出張が多く、時差ボケに悩んでいます。
A 米国方面は早寝早起き。欧州方面は遅寝遅起きで準備を。
旅行前の睡眠が不足していると、時差症状による睡眠障害がより強く出現する場合が多いです。渡航前は十分な睡眠の確保を。米国など東方面に向かう場合は、数日前より少しずつ早く床につき早起きをして体を現地時間にゆっくりと慣らしましょう。欧州方面など西へ向かう場合は遅く寝て遅く起きるようにして準備しましょう。滞在期間が2~3日なら無理に合わせず、日本時間の夜の時間帯にまとまった睡眠をとるようにし、日本のリズムを保ったほうが楽な場合も。
Q&Aは『一流の睡眠』(裵英洙著)や取材をもとに編集部作成。
西野精治(にしの・せいじ)
医師
1955年、大阪府生まれ。医学博士。スタンフォード大学医学部精神科教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長。著書に『スタンフォード式 最高の睡眠』。
裵 英洙(はい・えいしゅ)
医師
1972年、奈良県生まれ。医学博士、MBA。金沢大学医学部卒、同大学大学院医学研究科、慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。著書に『一流の睡眠』など。
PRESIDENT 2018年9月17日号
https://president.jp/articles/-/27220?page=5
健康なスピリットで生きれば、悪い人生にはならない
ネイティブ・アメリカンが大切にしている「20のこと」が、心に刺さる
2015/09/04YUUKI
アメリカの先住民族であるネイティブ・アメリカン。彼らは自然を愛し、人を敬うことで知られています。
ここで紹介するのは、「Higher Perspective」に掲載されたネイティブ・アメリカンが大切にしていること。シンプルだからこそ、その重みを感じることができるのでは?
01.
毎日祈るのは
「本当の気持ち」を知るため
1人でも誰かと一緒でも、自分の好きな方法で毎日祈りましょう。自分の心の声は、話しかけないと聞くことができません。
02.
正しくない人でも
受け入れる
誤った道に進んでしまった人に出会うこともあります。けなさずに、彼らが再び正しい道に戻れるように祈りましょう。
03.
自分の代わりはいない
だからこそ、
自らを知るべき
どんなに頑張っても、あなたの進む道は誰も作ってくれません。あなたの代わりに人生を歩んでくれる人も、いないのです。
04.
ゲストには
最高のおもてなしを
ゲストには、最上級の敬意を払ってもてなしましょう。
05.
地球は人間のものじゃない
だから、奪わない
地球はあなたのものではありません。あなたが努力して手に入れたものでも、誰かにもらったものでもありません。
06.
人間だけでなく、すべての自然に
敬意を払う
動物に植物、人や場所、そして地球。すべてに尊敬を持って接しましょう。
07.
他人の言葉には
きちんと耳を傾ける
さえぎったり邪魔したりしないこと。それが何であれ、彼らの発言や行動を尊敬するのです。
08.
汚い言葉は口にしない
それは、自分に返ってくる
悪口を言うのは、世界へネガティブなエネルギーを放出すること。これは後々、自分に返ってきます。
09.
誰だって間違いを犯す
すべての間違いは、許されるべきなのです。
10.
ネガティブな考えは
病のもと
ポジティブな考えや心を持つようにしましょう。
11.
自然はコントロールできない
私たちは自然の一部。自分たちの思い通りにしようと思わないことです。
12.
子どもたち=未来
教育を大切にする
尊敬を持って接し、よい大人へと育てましょう。彼らに満足する教育を与えるのです。
13.
相手の心を
傷つけない
わざと相手を傷つけてしまえば、後々あなたも傷つくことになります。
14.
何があっても
本当のことを口にする
真実は私たちを自由にしてくれます。
15.
体と心の
バランスを整える
精神と肉体、感情のバランスを整えるようにしましょう。
16.
決断は人生を作る
だからこそ意識を高く持つ
当然ですが、すべての人の行動には責任があります。
17.
他人の心を
尊重する
親しき仲にも礼儀あり。相手の心の中に、むやみやたらと入らないように。
18.
どんな時でも
自分を裏切らない
自分に正直でいなければ、自然に振るまえないのです。他人を助けることもできません。
19.
自分の思いを
他人に強制しない
他の人に対して、自分の思いを強制しないでください。
20.
ここで挙げたことを
他人とシェアする
寛大な気持ちでシェアすれば、気持ちがよくなります。
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